2024.11.28
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借地の地代に関する基礎知識
地代の値上げ・値下げ請求
借地契約において合意で決めた地代を、相手の同意なく当事者の一方から変更請求できるのは何故なのでしょう。
1.借地借家法第11条(地代等増減額請求権)の規定によって変更できます。これは、継続的契約関係における事情変更の規定になります。
2.地代増減額請求権は、借地契約は継続的に長い期間続くものだから、ある時点で合意した賃料も、時間が経つと不相応になってしまうので、値上げ・値下げが必要な場合には、当初合意した賃料相場に従って値上げ・値下げを一方当事者から請求できるようにしたものです。
地代の相場
普通借地契約において地代の相場はどれくらいが適正なのでしょうか。
1.近時取り扱う実務では、固定資産税・都市計画税の3~4倍程度が多いです。
2.正確には不動産鑑定によることとなるが、鑑定費用も数十万円掛かってしまいますので、固定資産税・都市計画税の評価証明書または公課証明書を取得して合理的な地代を計算します。
不動産鑑定による地代算定方法
不動産鑑定士が地代の算出する方法として様々な方法が用いられるが、主たるものとして以下の方法があります。
1.スライド法(適正地代=従来の地代×変動率)
地代の値上げ・値下げの問題は、法律的に「継続賃料」の考え方が重視されるので、スライド法による算定がなじみやすいようです。
一方で、当初の地代の決め方が不合理な場合に、適正な地代に是正することが困難である等の短所があります。
2.利回り法(地代=基礎価格×適正利回り+必要経費)
土地の価格を基礎として、これに期待利回りを乗じた額に賃貸借を継続するために必要な固定資産税・都市計画税等の諸経費を加えた額を賃料とする方法。これは、契約の個別的要因を捨象されてしまうことや、期待利回りをどのように設定するかで算定額が変動するため、鑑定士の主観的な判断に左右されやすいという短所があります。
3.差額配分法
適正な地代と現在の地代の差額についいて、契約内容、契約締結の経緯を総合的に勘案し、当該差額のうち地主に帰属する部分を適正に判断した額を改正前の地代に加算して地代を求める方法。当初の地代の決め方が不合理であった場合に、配分割合を調整して地代の是正を図ることができるが、差額の配分割合を定める客観的な根拠に乏しいという短所がある。通常は差額のうち地主に帰属する部分の割合は、2分の1、又は3分の1程度になります。
4.賃貸事例比較法
近隣の地代の事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらの地代額に必要に応じて事情補正及び時点補正行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求められた賃料を比較考量し、相当賃料を求める方法。そもそも土地の賃貸借は、土地の個別的要因のほかに賃貸借の始期、賃貸借に至った経緯、権利金の授受の有無、契約条件、賃料改定の動向、賃貸借当事者の主観的な事情等が異なるのが通常であり、この方法で求められた賃料は、その地域の一般的な賃料水準は示すが、個別的な事情が多い当該借地の適正な地代を算定する根拠としては説得力に欠けるという短所があります。
前記いずれの方法にもそれぞれ長所・短所があるため、実際には前記各方法で新地代額を算定し、その事案の特殊性に配慮して、各算出方法について重視する比重を定め、適正地代を総合的に決定する場合が多いのです。
借地人による土地の評価証明書の取得方法
これまで土地や建物の固定資産税・都市計画税の評価額や税額は、その所有者しか閲覧できなかったのですが、平成15年4月1日の評価証明の取扱い改正により、土地の所有者以外に借地人なども固定資産課税台帳(評価証明書・公課証明書)の記載事項を閲覧することができることとなりました。借地人が閲覧できるようになった根拠は明確ではなく、総務省の通知で処理されているようです。
「借地人による評価・公課証明書の申請方法と必要書類」
1.借地契約書又は登記事項証明書(借地人が所有している借地上の建物と借地権が設定されている地主名義の土地)。
2.本人確認書類(運転免許証・住民基本台帳カードなど)代理人の場合は委任状が必要になります。
3.手数料は土地1筆につき300円程度必要です。
地代の値上げ請求(値下げ請求も同じ・賃借人と地主の立場が変わるだけです)
地代の値上げを借地人に請求するときは、できるだけ話し合いで解決できるように努めましょう。借地という長い期間付き合う地主と借地人という関係上、お互いが相手方のことを思いやって良好な関係を築くことはとても大切です。
しかしながら、どうしても話し合いで値上げの協議ができない場合もあるでしょう。
その際は以下の手続きに取らざるを得ません。
1.正式に値下げの請求を行う。
ア)内容証明郵便(配達記録付)で行う方が良いです。
イ)後日、裁判等で値上げが認められた時、値上げ請求の意思表示が借地人に到達した時点から値上げの効果が生じるからです。よって、通知した内容と届いた日が証明できる内容証明郵便で通知を行うべきです。
ウ)相談をした不動産会社等には、値上げの問題をできる限り話し合いで解決するように今一度交渉してもらいましょう。理由としては、調停・訴訟はコストがかかるからです。
2. 調停を申し立てる。
ア)値上げ交渉がまとまらなければ、調停を申し立てることになります。
イ)地代の値上訴訟には調停前置主義がとられているので、先ず、調停を申し立てる必要があります。借地関係は今後も継続していくものですので、訴訟の前に裁判所での話し合いで解決することが望ましいという趣旨です。
3. 訴訟を提起する。
ア)調停でまとまらなければ、地代値上請求訴訟を提起します。
イ)弁護士費用、不動産鑑定士への鑑定料(30万円~80万円)が必要になり、費用負担も考慮して訴訟を提起するかどうかを事前によく検討しましょう。
ウ)この弁護士費用や鑑定費用の負担を考えれば、地主にとって、地代額が安い場合に訴訟を起こすことは困難な場合もあります。
ただ、あまりにも安い地代で居座っている借地人に対しては、他の借地人に対する管理にも影響してくるので、費用がかかっても、訴訟を起こさざるを得ない場合もあるでしょう。
暫定期間の借地人
地代の値上請求訴訟の結論が出るまでの間、借地人が支払うべき地代の額は誰が決めるのでしょうか。
これは、値上げ請求された借地人が決めます。
逆に値下請求訴訟の場合は、値下げ請求された地主が決めます。
暫定期間に支払った地代は、結論が出て、不足している場合は、内容郵便が届いた日から清算を行い、かつ、年1割の利息をつけて支払う必要があります。そのため借地人は暫定期間に支払う地代については予防策として、今までの地代と地主の請求地代の差額の半分くらい上乗せした額を支払っておくと値上げが認められた時の負担が少なくて済みます。
地代の供託
1.地主から地代の値上げ請求書が届いたことを理由に地代の供託はできません。
地代供託ができる場合は以下の通りです。
ア)地代を地主のもとに持参したが、受領を拒まれた場合。(受領拒否)
イ)あらかじめ地主が、値上げ後の地代全額でなければ、地代は受領しない旨を借地人に通知していた場合に、借地人が地代の支払を準備して、その旨を地主に通知して受領を催告(口頭での提供)すれば、弁済の提供があったことになり、弁済供託が可能です。
※地代の値上げ・値下げでトラブルになっても借地人は地代を支払い、地主はこれを受領することが大切です。
2. 供託された地代を地主が受け取る場合の注意
地主から増額請求後に、その増額賃料に満たない供託賃料を、そのまま供託所から受け取ると、地代の増額請求を撤回したものとみなされたり、増額請求後の賃料に対する不足分の請求権を放棄したものとみなされ、不利益を被る可能性があります。
地主が供託所から供託賃料を受け取る時には「増額請求後の賃料債権の一部に(内金)に対する弁済として受領する」旨を供託金払渡請求書に記載して供託所に提出し、供託金還付請求手続を行うと良いでしょう。その供託金払渡請求書の控えは手元に保存しておくことが大事です。
3. 供託還付・取戻請求権の時効消滅
供託賃料の消滅時効の起算時は「紛争解決時」ですので、事実上供託金は殆どの場合は消滅時効にはかからず、払渡請求が可能という結果のようです。
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