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2024.11.29

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借地契約における増改築禁止特約とは?

借地契約における増改築禁止特約とは?

増改築禁止特約とは?

増改築禁止特約とは、地主が借地契約において、借地人に対し、借地上の建物の増築・改築をする場合には地主の承諾を必要とする特約です。

増改築禁止特約と呼ばれてはいますが、一般的には「増改築ができない」という特約文にはなっていません。

Ex)

「第●条 借地人は借地上の建物を増改築する場合においては、予め地主の書面による承諾を得なければならない。」

というような特約文になります。


増改築禁止特約の増改築とは?

「増築」:床面積を増やす築造

「改築」:同じ場所で新材料を使った建替え工事

「再築」:旧建物の材料を使用した建て替え工事


※他には大修繕も解釈上、ここでの「増改築」に入ると解されています。



増改築禁止特約が無い借地契約の場合


旧借地法では増改築禁止特約が無ければ、非堅固・堅固建物所有目的内での建替え・増築は自由です。

つまり非堅固建物(木造・鉄骨造)➡非堅固建物(木造・鉄骨造)

堅固建物(鉄筋コンクリート造)➡堅固建物(鉄筋コンクリート造)は自由ということです。

非堅固建物(木造・鉄骨造)➡堅固建物(鉄筋コンクリート造)は借地契約を堅固建物所有目的として契約内容を変更しなければなりませんので、地主の承諾なく建替えすることはできません。



※旧借地法第7条


借地権の消滅前、建物が滅失したる場合において(地震・火災に限らず解体も含む)、残存期間を超えて存続すべき建物の築造に対し、土地所有者が遅滞なく異議を述べざりしときは、建物滅失の日より起算し、堅固の建物については30年間、その他の建物については20年間存続す。但し残存期間これより長きときはその期間による。



増改築禁止特約の有効性


増改築禁止特約は「借地人に不利なものとして無効とならず」特約として有効とされています。理由としては以下があげられます。

1. 増改築禁止特約が設けられる理由としては、借地人が自由に借地上の建物を建替え・増築ができるとすると、

①    借地契約終了時に、借地人に建物買取請求を行使された場合の買取価格が高額になってしまう。

②    期間満了の際、法定更新のためには「建物が存在する」ことが必要であり、増改築が自由だと、借地権の存続期間が更新される不利益を地主が受けることになります。そのため、増改築に地主の承諾を必要とする特約を設けて、このような地主側の不利益を防止するために設けられています。

2.増改築禁止特約が特約として有効とされる理由は以下になります。

①     増改築禁止特約は、単に増改築を制限した特約に過ぎず、法が認める借地の更新など基本的な借地の使用制限を制限する特約ではないから、借地借家法第9条によって無効とされる借地人に不利な特約に該当しない。

②     増改築禁止特約を設けることは、前記の通り地主側にも合理的必要性がある。

③     借地借家法第17条2項は、増改築禁止特約が有効であることを前提に、これを裁判所が変更する制度を定めたと考えられる。

④     以上の理由により、借地借家法第9条には反せず、有効と解するべきであり、判例・学説も同様に解している。



※借地借家法第9条(強行規定)


この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする。



※借地借家法第17条(借地条件の変更及び増改築の許可)


2 増改築を制限する旨の借地条件がある場合において、土地の通常の利用上相当とすべき増改築につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、その増改築についての借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。



増改築禁止特約に伴う、建替え承諾料の相場は?


建替え承諾料の相場は、更地価格の3%~5%と言われています。

更地価格とは路線価ではなく、公示価格ベースで判断されることが多いです。

原則的には更地価格の3%で考えられています。


理由としては、増改築禁止特約があるため、借地人が地主に増改築許可を求めたところ、地主が拒否すると、借地人から裁判所に「地主に代わって裁判所が増改築の許可を出すように借地非訴の申立」ができます。

この裁判所が地主に代わって増改築の許可を出す場合、建替えによる地主の不利益を補うため、承諾料を支払うことを条件に増改築の許可を出します。更地価格の3%という料率は、その際の裁判所が定める承諾料の相場になります。

また、借地人が建替えする際に銀行融資を使う場合には、銀行から「抵当権設定承諾書」を必要とすることがほとんどです。

ですから、「建替え承諾書」に、抵当権設定承諾書への署名押印もいただけるような内容のものを専門家に作成してもらうことが大事です。



増改築禁止特約と信頼関係破壊の理論


増改築禁止特約が設けられている借地契約において、地主の承諾なく柱・ハリ等の構造体を交換し、建物の耐用年数を大幅に伸ばすような増改築をした場合、地主は借地契約を解除できるか?

 このようなケースでは、地主の承諾を得ずに増改築が行われたときでも、借地人の増改築行為が悪質とみられる場合を除き、借地の契約解除は難しいとされます。


理由としては以下が考えられます。


1. 増改築禁止特約がある場合に、借地人の無断増改築が借地契約の解除原因になるかどうかが問題となりますが、判例では、建物所有を目的とする土地の賃貸借中に、増改築禁止特約が付されていたが、賃借人が賃貸人の承諾を得ないで増改築をした場合において、「この増改築が借地上の土地の通常の利用上相当であり、土地賃貸人に著しい影響を及ぼさないため、賃貸人に対する信頼関係を破壊する恐れがあると認めるに足りないときは、賃貸人が前記特約に基づき解除権を行使することは、信義誠実の原則上、許されないものというべきである」と判断しました。(最判昭和41年4月21日民集20巻4号720頁)

2. 判例上、賃料不払いに基づく賃貸借契約の解除により、建物の明渡を求めた事例において、信頼関係を破壊する程度の債務不履行が有るか否かを基準に解除権の行使を認める信頼関係破壊理論が採用されていたが(最判昭和39年7月28日民集18巻6号1220頁)、判例は、無断増改築を理由とする解除の場合にも、信頼関係破壊理論が適用されることを明らかにしました。

3. 地代不払いによる解除も、一定期間不払いがあれば、地主の解除は認められやすい。ところが、無断増改築による解除の場合には、解除が認められにくいのは、


①    増改築はもともと自由であり、禁止特約による例外的な制限であること 


②    増改築禁止特約があっても、借地人が借地非訴手続きをとれば、ほとんどの場合、増改築が認められる。

からであります。



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