2024.12.09
/お役立ち情報
空き家等対策の推進に関する特別措置法・一部改正
令和5年6月14日、空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律が公布されました。
改正法の施行期日は、公布から6カ月以内となっています(施行日は別途政令で定めます)。
【背景】
「空き家」とは、一般的には「誰も住んでいない家」のことをいいます。平成27年(2015年)5月に全面施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「空家法」という。)」第2条第1項で定義される「空家等」は、「概ね年間を通して居住やその他利用がされていない建築物(住宅に限らない)」を対象としています。
また、総務省が実施している「住宅・土地統計調査」では、空き家を次の4種類に分類しています。
a.売却用の住宅…新築・中古を問わず、売却のために空き家になっている住宅
b.賃貸用の住宅…新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅
c.二次的住宅…別荘などの普段は人が住んでいない住宅
d.その他の住宅…1~3以外の人が住んでいない住宅で、転居・入院などで長期不在の住宅や取り壊し予定の住宅など
このうち、「売却用の住宅」、「賃貸用の住宅」、「二次的住宅」の空き家については、別荘などとして現に使用されていたり、売却や賃貸のために管理されていたりすると考えられます。一方、「その他の住宅」に分類される空き家は、現に人が住んでおらず、長期にわたって不在であり、そのまま放置される可能性が高い空き家といえます。「その他の住宅」は定期的な利用がされず、管理が不十分な状態となりがちであるため、その増加は近年大きな社会問題になっています。
「住宅・土地統計調査」(総務省)によれば、「その他の住宅」の空き家は、平成10年(1998年)から平成30年(2018年)の20年間で、約1.9倍の182万戸から347万戸に増加しており、今後も急速に増加していくと予想されています。
平成27年に空き家等対策の推進に関する特別措置法(空き家特措法)が施行されても上記のように空き家がどんどん増えてしまっています。
空き家は、所有している自分たちだけの問題ではなく、近隣にも大きな影響を与える存在となります。
「そのうちどうにかしよう」と考えて放置していると、家屋の状態が悪くなり、近隣に迷惑をかけてしまいます。どのような事情であれ、空き家の所有者にはきちんと管理する責任があることから、空き家特措法の一部を改正して対策することとなったようです。
【改正のポイント】
「ポイント1.管理不全空き家の新設」
今回の改正の最も大きなポイントは、状態は悪くないが1年程度住んで(使われて)いない「空き家」と、状態が悪く周囲に悪影響を及ぼすような「特定空き家」の間の空き家として、「管理不全空き家」というカテゴリーを設けたことです。
現状ではひどく状態が悪化していないが、今後放置すれば「特定空き家」となり得るような空き家を、「管理不全空き家」として指定することになりました。これまで「特定空き家」になるまで対応しにくかった、行政による改善の指導・勧告が行えるようになります。
「ポイント2.管理不全空き家は固定資産税の減免解除」
上の図にもありますが、勧告を受けた「管理不全空き家」は、固定生産税が1/6に減額される住宅用地特例が解除されます。
これまで、相続で親が住んでいた家を引き継ぎ、その家に住まず空き家となっているような状況で、相続人(例えば子ども)がその土地を保有しながら減税措置を受け続けるために、家をそのまま放置するようなケースが散見されていました。このように「減税処置を受けるために放置された空き家」が、その後「特定空き家」となってしまうわけです。そこで、今回の改正では、住宅の状態が悪化する前の段階からこうした措置を厳格化することで「空き家管理の確保」を図り、周辺住民の住環境を維持しようというわけです。
「ポイント3.所有者の責務強化」
現行の「適切な管理の努力義務」に加え、国、自治体の施策に協力する努力義務が追加されています。
「空き家」の管理は、いうまでもなく所有者が適切に行うべきことですが、現行法の「適切な管理」に対する努力義務に加えて、「国・自治体の施策に協力する」という努力義務が追加されたということです。空き家に係る国や地方自治体の施策に対して、「聞く耳をもたない」ではなく、「適切に対応してください」ということです。
「ポイント4.空き家の活用拡大」
①空家等活用促進区域 (例)中心市街地、地域の再生拠点、観光振興を図る区域等
・ 市区町村が区域や活用指針等を定め、用途変更や建替え等を促進
⇒安全確保等を前提に接道に係る前面道路の幅員規制を合理化
⇒指針に合った用途に用途変更等する場合の用途規制等を合理化
・ 市区町村長から所有者に対し、指針に合った活用を要請
②財産管理人による所有者不在の空家の処分
③支援法人制度
・ 市区町村長がNPO法人、社団法人等を空家等管理活用支援法人に指定
・ 所有者等への普及啓発、市区町村※から情報提供を受け所有者との相談対応
※事前に所有者同意
・ 市区町村長に財産管理制度の利用を提案
市区町村が、中心市街地や地域の再生拠点、観光振興地区などの「空き家等活用促進地域」の指定権限を持つことになり、また、同地域の指定や空き家等活用促進指針を定め、用途変更や建て替えなどを促進できるように、接道規制や用途規制の合理化を図ることができるようになります。加えて、市区町村長は、区域内の空き家等所有者らに対して、指針に沿った活用を要請することができるようになります。さらに空き家等の管理・活用に取り組むNPOや社団法人などの団体を、市区町村長は「空き家等管理活用支援法人」に指定できるようになります。空き家対策は地域促進につながることから、地方自治体への権限移譲が図られます。
「ポイント5.特定空き家の除去などの円滑化」
①状態の把握
・ 市区町村長に報告徴収権(勧告等を円滑化)
②代執行の円滑化
・ 命令等の事前手続を経るいとまがない緊急時の代執行制度を創設
・ 所有者不明時の代執行、緊急代執行の費用は、確定判決なしで徴収
③財産管理人※による空家の管理・処分(管理不全空家、特定空家等)
・ 市区町村長に選任請求を認め、相続放棄された空家等に対応
※所有者に代わり財産を管理・処分。 (注)民法上は利害関係人のみ請求可
市区町村長に「特定空き家」に関する報告徴収権が与えられます。これにより資料の提出などを求めることができ、勧告等が円滑に行われるようにします。
また、除却などの代執行が円滑に進むように、①命令等の事前手続を経る時間がない緊急時の代執行制度が創設され、②所有者不明時の代執行、緊急代執行の費用は、確定判決なしで徴収できるようになります。
「空き家対策」は大きく進みましたが、実際に相続して空き家になってしまい、どうしたらよいのかわからないことも多いと思います。確かに難しいです。
でも、そのままにしておくと固定資産税も高くなってしまったり、事故の発生率も高まり所有者責任が問われるリスクも高くなります。
不動産の取り扱いで迷ったら、こう考えてください。
「使わない不動産を所有するのは、負債を抱えているのと同じ。」
不動産は自分で使用・活用するか、収益不動産として活用したり、売却することができて、資産性が認められるものです。
空き家をどうするかお悩みの方は、「相続手続きの相談窓口」にお気軽にご相談ください。
不動産に精通している行政書士が、安心いただける方法をご提案させていただきます。